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法コラム

家主と地主×弁護士法人法律事務所オーセンス

家主と地主 第9回第44号

契約期間中の賃料変更

賃料の支払いは、賃貸借契約におけるもっとも基本的な要素の一つです。

今回は、賃貸借契約の存続中に、契約当初には想定していなかった事情が生じた場合を想定して、賃料の変更が認められるかどうかを、事例付で解説していきます。

事例1

現在、賃貸しているマンションのエントランスが古くなってきたので、大規模なリニューアルをしようと考えています。

リニューアルには相当な費用がかかる見込みです。

そこで、今まで、建物の築年数を考慮して賃料を近隣の賃料相場より低めに設定して賃貸してきましたが、エントランスのリニューアルに伴い、賃料も近隣の賃料相場と同程度に値上げしたいと思います。

このように、賃貸物件の共用部分に付加価値を付けた場合、賃料を値上げすることはできるのでしょうか?

弁護士の回答

リニューアルの規模・内容によります。小規模なリニューアルでは、賃料を値上げすることは難しいと考えられますが、大規模なリニューアルで、これにより建物全体の価値が大きく向上したといえるような場合には、賃料を値上げすることができる可能性もあります。

借家関係は、長期にわたって継続することが予定されているものであることから、借家契約の当初に当事者が合意した賃料が、その後の事情により不相当になることがありうるため、契約存続中でも当事者に賃料の増減額請求権が認められています(借地借家法32条)。

同条は、「建物の借賃が・・・土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により・・・不相当となったときは・・・契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる」と規定しています。

そこで、「建物の価格の上昇」により賃料が不相当となった場合には、賃料の値上げを請求することができることになります。

ただ、建物の価格は賃料を客観的に決定する一要素に過ぎません。

裁判上、賃料を客観的に算定する場合には、建物の価格のみならず、土地の価格や租税負担、近隣の家賃相場等の具体的事情を総合考慮して決定されることになります。

事例の場合、エントランスは賃貸人全員が使用する共用部分であるといえることから、エントランスをリニューアルすれば、一応は、賃借人全員との関係において建物の価値が向上したといえます。

もっとも、リニューアルの規模にもよりますが、エントランスのリニューアルのみをもって賃料の増額を求めることは一般的には難しいといえます。 賃貸人は、賃借人に対して、目的物を使用収益させる義務を負っていることから、一定程度の改修は賃貸人の義務とも考えられるからです。

裁判例で賃料増額が認められたのは、建物の構造を木造から鉄筋造りに変更したような大規模な改修があった場合に限られています。

事例2

現在、賃貸しているマンションの1室で自殺者が出ました。

自殺者が出た物件の隣に居住している賃借人から、自殺者が出たことを原因として賃料を値下げするように交渉されています。

この場合は、賃料の値下げに応じなくてはならないのでしょうか?

弁護士の回答

具体的事情にもよりますが、隣室の賃借人に対しては賃料減額請求に応じる必要はないものと考えられます。

現在、不動産業者Aさんに不動産の仲介を依頼していますが、入居希望者との交渉力に不安があり、せっかく入居を希望してくれる方がいても物件のメリットをうまく伝えきれず、なかなか契約に至りません。一般的に、自殺者が出た、いわゆる事故物件では、新たに契約することを多くの賃借人がためらってしまうことから、1年から3年程度の間、賃料が通常の半額程度での契約を余儀なくされてしまうことが多いようです。

では、契約中の隣人から、隣室で自殺者が出たことを理由として賃料等の減額請求をされた場合、これに応じる義務はあるのでしょうか。

この点につきましては、参考になる判例があります。

東京地裁平成19年8月10日判決は、賃貸物件で自殺者が出た場合の損害についての判断の中で、自殺があった部屋と他の部屋とでは、常識的に考えて感じる嫌悪感の程度にかなりの違いがあることは明らかであり、同じ建物であっても、自殺があった部屋以外の部屋を新たに賃貸する場面では、新しく契約をしようとする新賃借人に対して建物内で自殺者が出たことを告知する義務はないと述べています。

また、損害の根拠を心理的な嫌悪感であるとしたうえで、自殺に伴う嫌悪感は、時の経過により希釈する類のものであるとも述べています。

この考え方を参考にすれば、①自殺者が出たという事実への関心は、当該物件とは異なり隣室においては一定程度弱まると考えられること、②そもそも、自殺者が出たことによる嫌悪感は、時間の経過とともに減少する一時的なものであり、建物の価値を継続的に低下させるものではないといえることから、事例のように賃貸借契約が存続している場合においても、当該自殺が社会的に耳目を集めるものであった等の特段の事情がない限り、隣室で自殺があったからといって、直ちに建物の価値が減少したとまではいえず、賃料の減額請求に応じる必要はないものと考えられます。

事例3

現在、マンションを賃貸しています。先日、マンションの賃借人から、マンションの老朽化を理由として、契約時の賃料より少ない賃料しか払わないといわれました。

当然、このような一方的な賃料の減額請求に応じることはできないので、今まで同様、契約した当時の賃料を請求したいと思います。

このような場合、家主としてはどのような対応をすればよいのでしょうか?

弁護士の回答

当事者間での話し合いがまとまらない場合、最終的には調停や裁判を経て、賃料の「客観的な相当額」を決定することになりますが、当事者間に協議が調わない間は契約時の賃料を賃借人に請求しましょう。

賃料の相当額については、最終的には裁判における鑑定手続き等を経て、客観的に確定されます。

もっとも、民事調停法は、建物の賃料の額についての争いがある場合は、まず調停の申し立てをしなければならない(民事調停法24条の2第1項・調停前置主義)としており、裁判手続きの前に、調停により当事者間での話し合いが行われます。

そして、調停により話し合いがまとまるか、裁判により相当賃料が客観的に確定されるまでの間は、賃貸人としては相当と認める額の建物の賃料を請求すればよいとされています(借地借家法32条3項)。

なお、裁判例においては、ここでいう「相当と認める額の建物の賃料」とは、特段の事情のない限り、従前賃料額と同額と推定されています(東京地裁平成10年4月16日)。

したがって、事例の場合でも、賃借人の主張する賃料減額請求に理由があるか否かに関わらず、賃料が確定されるまでは、家主としては、契約時の賃料が相当賃料であると主張して、契約時の賃料を請求することができます。

ただ、事後的に賃借人の賃料減額請求が認められた場合、賃貸人が減額後の賃料を超過して受領した金銭については、年1割の利息を付して賃借人に返還する必要があるとされているので、この点はご留意ください。

執筆者

元榮 太一郎 代表弁護士

元榮 太一郎 代表弁護士(第二東京弁護士会所属)

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    公益社団法人全日本不動産協会 東京都本部城南支部「不動産街頭無料相談会」森田雅也弁護士、嶋田葉月弁護士
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