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法コラム

家主と地主×弁護士法人法律事務所オーセンス

家主と地主 第10回第45号

契約書に明記していても認められないケース

建物を貸貸する際に賃貸人に生じる様々なリスクを回避するため、賃貸借契約書には各種のリスク回避のための条項が設けられています。

今回はそのような各種のリスク回避条項が持つ法的な意義について、事例付きで説明していきます。

事例1

相談

特約の合意があれば、安否確認目的の立入りは可能か

高齢者が賃貸物件で孤独死した場合、往々にして発見が遅れがちになってしまい、原状回復に多額の費用を要するケースが多いと聞きます。

私の所有する賃貸マンションでは、孤独死の発見が遅れることによる損害を最小限に抑えるため、賃借人の安否確認をすることができる体制を作りたいと考えています。

具体的には、トイレなど物件内に人の動きを感知するセンサーを設置したうえ、「センサーが3日間感知しなかった場合には賃貸物件に立ち入ることができる」といった内容の特約の合意を賃貸借契約に追加して、賃貸人が賃貸物件内に立ち入って賃借人の安否確認ができようにしたいと考えています。

このような特約の合意によって賃借人の意思を確認した場合であれば、実際に安否確認のために賃貸物件内に立ち入ることに法的なリスクはないのでしょうか?

回答

違法とされる可能性は高い

事例の特約の合意だけを根拠に賃貸物件に立ち入る場合には、そのような立ち入りは違法とされる可能性が高く、民事・刑事の法的責任を追及される可能性があります。

建物の賃貸借契約を締結して物件の引渡しを受けた賃借人は、当該物件について「独立の排他的占有」を確保できることになります。つまり賃借人には、契約の範囲内で自由に賃貸物件を利用し、また、他人が勝手に賃貸物件に入ってくることを防止・排除する権利が認められるということです。

このような権利を有する賃借人に対し、無断で賃貸物件に立ち入った場合には、法律上、不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償請求を受けたり、住居侵入罪(刑法第130条)に問われて逮捕・起訴されるなど、民事・刑事の法的責任を追及される可能性があります。

これは自己の権利を実現するために行った場合であったとしても同じです。

法治国家においては、自己の正当な権利を実現するためであっても、相手方の意思に反して強制的に行う場合には法的手続によらなければならないとされています。これを「自力救済の禁止」と言います。

今回の事例の特約は、孤独死を早期発見し対応する趣旨ということで、自力救済の一環としての立入りを認める内容となっています。

このような特約のみを根拠として賃貸物件への立ち入る場合には、その特約が有効であることが前提となります。

この点、これまでの裁判例において裁判所は、自力救済を容認する特約の有効性の認定について、一貫して厳格な立場をとってきました。つまり、自力救済は法的手続によったのでは権利の実現が不可能または著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合を除くほかは原則として許されず、そのような特別の事情がない場合に適用する場合には自力救済特約は公序良俗に反して無効となるとしています。

今回の事例の特約については、「3日間センサーが感知しない」ということだけで必ずしも緊急やむを得ない特別の事情があるとはいえないと考えられ、特約の文言に形式的にあてはまる状況でも特約は必ずしも有効ではありません。

したがって、事例の特約の合意だけを根拠に物件に立ち入る場合、違法な自力救済として損害賠償請求を受けたり住居侵入罪に問われる危険性があるといえます。

一方で、事例の特約とは異なり、特約の内容が、「一定の場合に物件内に立ち入って賃借人の安否を確認し対応しなければならない」という賃貸人の義務を定めるものである場合には状況が異なります。

このような特約は、自力救済を容認するものとは評価されず、有効と判断される可能性が高いといえます。したがって、そのような特約の合意を根拠とする賃貸物件への立入りは適法に行うことができると考えられます。

警備会社が、警備を請け負った対象物件の警報機が作動した際に、駆けつけて物件内を確認するのもこれと似た状況と言えます。

ただし、この義務を怠った場合には、賃借人から契約違反を主張される可能性もありますので注意が必要です。

今後ますます増加する高齢の入居者への対応は、賃貸経営における重要なポイントとなります。適切な法的知識を備えた対応が望まれます。

事例2

相談

賃借人が破産した場合、契約解除は可能か

現在賃貸しているマンションの賃借人が破産手続開始の申立てを受けたと聞きました。

現時点で賃料の滞納はありませんが、破産せざるを得ないような状況であればいつ払えなくなってもおかしくないと思いますので、できれば契約を解除したいと考えているところです。

賃貸契約書には「賃貸人は、賃借人について破産手続開始の申立てがされた場合は、直ちに賃貸借契約を解除することができる」旨の条項が定められているのですが、このような条項は有効なのでしょうか?

またこのような状況で賃貸借契約を終了させる方法は他にあるでしょうか?

回答

賃借人に不利な条項は、借地借家法第30条で無効

事例の条項を根拠とした解除は認められません。

事例の状況で、賃貸人が賃貸借契約を終了させるには、破産管財人に解除を促す方法(破産法第53条第2項)などによる必要があります。

賃借人に不利な条項は借地借家法第30条により無効となります。賃借人に破産手続開始の申立てがあった場合に、賃貸人が無条件に賃貸借契約を解除できる旨の条項は、建物の賃借人に不利な条項として無効になると考えられ、最高裁昭和43年11月21日判決も、同様の判断をしています。

賃貸人が取りうるその他の賃貸借契約の終了方法としては、次のようなものが考えられます。

まず、当事者間の信頼関係が破壊された場合には、賃貸借契約を解除できる、「信頼関係破壊の法理」が裁判例上確立されていますので、これによって賃貸借契約を解除することが考えられます。

もっとも、破産手続開始の申立てがされたとしても、事例のように賃料滞納がないことも考えられ、破産手続開始の申立てがあったことのみを理由とした信頼関係破壊は認められないと考えられます。

次に、破産法においては、双方未履行の双務契約は、破産管財人に対して契約の解除または継続を催告することができるとされ(破産法第53条2項本文)、催告を受けた管財人は、契約解除か継続を選択することになります。

そしてこの催告期間内に確答が無い場合には、賃貸借契約は解除されたものとみなされます(破産法第53条2項)。

賃貸借契約は双方未履行の双務契約としてこの催告を行うことが可能とされていますので、この催告によって管財人に賃貸借契約を解除してもらえる可能性があります。

さらに、破産せざるを得ないような経済状況の場合、賃借人が賃料を数か月にわたって滞納していることも考えられ、賃料不払いを理由とした債務不履行解除(民法第541条)も考えられます。

いずれにしても、破産手続開始の申立てがされて経済状態の不安定な賃借人を抱える賃貸人としては、早期の契約終了を検討することが重要になります。

執筆者

元榮 太一郎 代表弁護士

元榮 太一郎 代表弁護士(第二東京弁護士会所属)

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  • 不動産街頭無料相談会
    公益社団法人全日本不動産協会 東京都本部城南支部「不動産街頭無料相談会」森田雅也弁護士、嶋田葉月弁護士
  • 不動産街頭無料相談会
    公益社団法人全日本不動産協会 東京都本部多摩北支部「不動産街頭無料相談会」森田雅也弁護士
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    公益社団法人全日本不動産協会 東京都本部城南支部「不動産街頭無料相談会」竹中恵弁護士、嶋田葉月弁護士
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